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札幌地方裁判所 昭和47年(わ)367号 判決 1972年9月21日

本店所在地

浦河郡浦河町荻伏町一番地

上田建設工業株式会社

(右代表取締役 安原熊夫)

本籍

浦河郡浦河町荻伏町一番地

住所

右と同じ

会社役員

上田宗男

大正一一年一二月三日生

事件名

法人税法違反被告事件

公判出席検察官

緒方重威 鎌田歳一

弁護人 岸田昌洋

主文

被告会社を罰金三〇〇万円に、被告人を懲役四月に、それぞれ処する。被告人に対し、この裁判が確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。訴訟費用は、その二分の一づつを被告会社と被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

当裁判所の認定した罪となるべき事実は、昭和四七年五月一七日付起訴状記載の公訴事実のとおりなので、これを引用する。

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述(被告会社に対しては第一回公判調書中の被告人の供述部分)

一、第一回公判調書中の検察官請求証拠目録証拠番号1ないし36 38ないし58 60ないし69および71ないし114(ただし、57は31と同じ)と同一であるから、これを引用する。

(法令の適用)

一、判示各所為 被告会社につき法人税法一六四条一項、一五九条一項、刑法六〇条

被告人につき法人税法一五九条一項、刑法六〇条(懲役刑選択)

一、併合罪加重 被告会社につき同法四五条前段、四八条二項

被告人につき同法四五条前段、四七条本文、一〇条(重い判示第一の罪の刑に加重)

一、刑の執行猶予(被告人) 同法二五条一項

一、訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件逋脱税額は二事業年度にわたり合計一、二〇〇万円を超え、その絶対額はともかく、被告会社の営業規模と比較すると大きなものというべきで、実所得額に対する申告所得額の割合は著しく少ない。そして被告人は相当以前から共犯者である妻と共に脱税を行つていたことをも考慮すると、本件は決して軽くない事案であるものと考えられる。たゞ、被告会社は被告人を中心とする典型的な同族会社で、脱税の動機も被告会社の経営基盤を確立するため資金の蓄積をはかり、また子供の将来や老後の生計の安定を考え蓄財しようとしたためで、私利私欲に発したものではないこと、被告人は捜査以来当公判定に至るまで犯行を卒直に認め改悛の情が明らかであり、現在は代表者の地位も辞していること、本件脱税発覚後被告会社は今までの前近代的な経理のやり方を改め、税理士に相談してガラス張りの合理的な経理をこころがけていること、本件脱税の本税およびこれに伴なう法人事業税、住民税は完納され、重加算税、延滞税も一部納付されていること等被告人に有利な諸事情も認められるので、その他諸般の情状を総合し、主文のとおり処するのを相当と認める。

(裁判官 清田賢)

起訴状

左記被告事件につき公訴を提起する。

昭和四七年五月一七日

札幌地方検察庁

検察官検事 緒方重威

札幌地方裁判所 殿

一、被告人

本店所在地 浦河郡浦河町荻伏町一番地

上田建設工業株式会社

(右代表取締役 上田宗男)

本籍 浦河郡浦河町荻伏町一番地

住居 右同所

職業 会社役員

上田宗男

大正一一年一二月三日生

二、公訴事実

被告会社は、浦河郡浦河町荻伏町一番地に本店を置き砂利・砂の採取販売、土木建築請負、自動車修理などを営む資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告人上田宗男は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人上田宗男は被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、被告会社の取締役である妻上田ヤス子と共謀のうえ、収入の一部を除外し、あるいは、工事原価の架空計上をするなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ

第一、昭和四三年四月一日から昭和四四年三月三一日までの事業年度において被告会社の実際所得金額が一九、二八二、八〇四円でありこれに対する法人税額が六、五三八、七〇〇円であるのにかかわらず、昭和四四年五月三一日浦河郡浦河町常盤町二八番地所在の所轄浦河税務署において、同税務署長に対し所得金額は一、一二四、四三〇円でありこれに対する法人税額は三一四、七〇〇円である旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と申告税額との差額六、二二四、〇〇〇円を免れ

第二、昭和四四年四月一日から昭和四五年三月三一日までの事業年度において被告会社の実際所得金額が一九、一二七、六二三円でありこれに対する法人税額が六、四八四、四〇〇円であるのにかかわらず、昭和四五年六月一日前記所轄浦河税務署において、同税務署長に対し所得金額は九六七、五六七円であり、これに対する法人税額は二七〇、七〇〇円である旨の内容虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と申告税額との差額六、二一三、七〇〇円を免れたものである。

三、罪名および罰案

法人税法違反 同法第一五九条第一項、第一六四条第一項、刑法第六〇条

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